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東京地方裁判所 平成4年(ワ)5500号 判決

原告 株式会社東京石河

右代表者代表取締役 石河準子

右訴訟代理人弁護士 福田照幸

福田治栄

被告 三和信用保証株式会社

右代表者代表取締役 山藤正直

右訴訟代理人弁護士 小沢征行

秋山泰夫

香月裕爾

香川明久

被告 徳山萬基

主文

一  被告徳山萬基は原告に対し、別紙物件目録≪省略≫記載の建物につき、横浜地方法務局神奈川出張所平成二年一二月二八日受付第七一五二四号所有権移転請求権仮登記に基づき平成三年九月二四日代物弁済を原因とする所有権移転登記手続をすることを承諾せよ。

二  原告の被告三和信用保証株式会社に対する請求を棄却する。

三  訴訟費用はこれを二分し、その一を被告徳山萬基の負担とし、その余は原告の負担とする。

理由

一  被告徳山に対する請求について

被告徳山は、本件口頭弁論期日に出頭しないから、請求原因事実を明らかに争わないものと認め、これを自白したものとみなす。

二  被告三和信用保証に対する請求について

1  本件建物につき、平成元年一一月二二日付で被告三和信用保証を権利者とする本件根抵当権設定登記がされ、平成二年一二月二八日付で原告を権利者とする本件仮登記がされたこと、その後本件建物につき右設定登記にかかる根抵当権に基づく担保権の実行としての競売開始決定がなされ、右決定に基づいて平成四年一月二七日付で本件差押登記がされたことは、当事者間に争いがなく、被告三和信用保証のその余の抗弁事実については、原告が明らかに争わないので、これを自白したものとみなす。

2  ところで、不動産登記法第一〇五条第一項によって準用される同法第一四六条第一項にいう「登記上利害ノ関係ヲ有スル第三者」として所有権に関する仮登記に基づく本登記につき承諾義務を負う第三者とは、当該仮登記後になされた権利の登記であって、その権利が本登記されるべき権利と内容的に矛盾、抵触する場合におけるその登記の名義人で本登記の申請義務者以外のものを指称し、その登記は所有権に関するものに限らず、その他の権利に関する登記や処分制限の登記をも含むものと解するのが相当であるが、当該仮登記より前に設定登記のされた抵当権等に基づき担保権の実行としての競売開始決定がなされ、差押えの登記が右仮登記後にされた場合における当該担保権者は、右の第三者に該当しないものというべきである。けだし、この場合においては、仮登記の順位が抵当権等の設定登記に劣後する以上、仮登記権利者は仮登記にかかる権利をもって担保権者に対抗することができず、その関係は仮登記が本登記になることによって何ら変わるものではないし、他方、担保権の実行としての競売手続においてされる差押えは当該担保権に内包される換価権の顕現たる性質を有するものであって、右担保権に劣後する権利であって差押えの登記以前に登記されたものが右差押登記によって何らかの新たな影響を受けることはないからである。

3  これを本件についてみると、本件差押登記は、本件仮登記後になされたものではあるが、本件仮登記より前に設定登記のされた根抵当権に基づく担保権の実行としての競売開始決定に基づいてされたものであるから、本件差押登記の名義人である被告三和信用保証は、本件仮登記に基づく本登記につき承諾義務を負わないものというべきである。

三  以上によれば、本訴請求のうち、被告徳山に対する請求は理由があるからこれを認容し、被告三和信用保証に対する請求は理由がないからこれを棄却する

(裁判官 魚住庸夫)

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